自分で簡単に!麻(リネン)製着物のお手入れ
今回は浴衣や甚平でよく使用される麻(リネン)製着物の自分でできるお手入れについて書いていきます。数多の天然繊維で最も涼しい繊維と言われ、さわやかな着心地が特徴の麻について、特徴とお手入れ方法を学んでより手軽に扱えるようにしましょう。
麻(リネン)の特徴
まずは麻(リネン)の特徴を知っておきましょう。
吸水性・通気性に優れている
綿と同じ特徴ですが、より極端です。吸水性は綿の約4倍もあり、みっちりと水を吸います。通気性も抜群で、逆に言えば冬着るには重ね着で工夫しないとちょっと寒いと思います。
軽い肌触り
自然素材らしいザラザラ感が残った独特の肌触りです。綿のような柔らかさはありませんが、接地面が少ない軽い肌触りでより涼しく感じます。
縮みやすく、シワになりやすい
これも綿と同じ特徴ですが、より極端です。なんと綿の2倍~3倍も縮みやすいので、洗濯にはかなり注意が必要です。シワもかなりつきやすく、綿と違って一度しっかりとしたシワができてしまうとアイロンをかけても戻りません。
染色が難しく、色落ちしやすい
しっかりと色付く綿や化学繊維とは違い、麻は色が定着しにくい素材です。染めにくく落ちやすいので色落ちも発生しやすく、お手入れには注意が必要です。
丈夫
引張に強い丈夫な生地です。花火大会等の野外イベントで着るにはぴったりですね。
洗濯の前に
このサイトのセルフクリーニング記事では毎度おなじみですが、大切なことなので何度でも書きます。洗濯をスタートする前に、必ず洗濯表示を確認しましょう。この後セルフクリーニングについて書いていきますが、対象の着物についている洗濯表示が最優先です。もし私が書く内容と洗濯表示が矛盾する場合は、必ず洗濯表示を優先して下さい。セルフクリーニングは自己責任になりますので、自信が無ければプロにお任せしてしまいましょう。
プロに任せるのであれば、こちらの記事をご覧ください。
出先で多少の汚れは無視が無難
出先での対応
麻は乾きが早いので、水はねの類はあまり気にしなくても大丈夫です。ただとにかくシワになりやすいので、焦って揉み洗い等で生地を折り曲げないように注意しましょう。
自宅での対応
比較的洗濯で注意すべきことが多い素材です。安易に洗濯機に放り込まず、対応方法をしっかり吟味してから作業を始めましょう。シワに対して最新の注意を払うのであれば、手洗いの方が無難だと思います。
洗濯の前に
麻はシワ対策として多くの場合洗濯機の使用ができません。必ず洗濯表示を確認しましょう。
洗濯表示の確認
一例として私が所持する麻製甚平の洗濯表示を見てみましょう。
こちらが洗濯表示です。
容器に手は手洗い(洗濯機不可)
左が手洗いのマークですね。この場合は洗濯機の使用が不可ということになります。麻は回転による捻れや脱水の圧力でシワや色落ちが起きやすいので、洗濯機の使用は推奨されていないことが多いです。
三角形は漂白剤
左中の三角形は漂白剤を意味します。三角形に✕印で漂白剤が使用不可であることを示しています。前述の通り染色が難しく色落ちが発生しやすい麻では、多くの場合漂白剤の使用に制限がかかります。
□の中に|はつり干し
中央のマークは干し方を示しています。中心に縦線はつり干し、左上の斜線は陰干しを意味しますので、この場合は日陰でのつり干しを示しているということですね。今回は濡れ干しのマーク(|が2本)ではありませんが、着物の場合脱水でのシワを避け洗濯後に残ったシワを伸ばす都合上、重さである程度のシワが伸びる濡れ干しの方がベターです。
アイロンマークは中の点に注目
右中のマークはアイロンを示します。中の点は温度を示し、3つの点が記載されている場合は最高温度200℃を限度として(高温での)アイロン仕上げが可能であることを意味します。麻は高温に強いのでかなりしっかりとアイロンをかけられますが、一度ついたシワが伸びにくい特徴も併せ持つのでアイロンの高価は綿と比較して限定的です。
◯はドライクリーニング
右の◯はドライクリーニングを示します。今回のように◯に✕がついている場合、ドライクリーニングは不可ということですね。自宅洗いでは関係ないので無視してしまって大丈夫です。
洗濯をスタート
ここまで準備ができたら洗濯をスタートしましょう。麻の洗濯では手洗いを基本とします。
温度は30℃前後で
温度が上がると繊維が硬くなり、縮んでしまうことがあります。とはいえそもそも手洗いでそこまで温度は上げられないと思うので、体温より低いくらいのぬるま湯を目安にすれば大丈夫です。
洗剤は中性洗剤
洗剤は一般的な弱アルカリ性洗剤よりも繊維への負荷が少ない中性洗剤が適当です。購入しておくと他の素材の着物にも流用できるので、おしゃれ着用の中性洗剤を用意できればベストです。
容器で押し洗いを
麻の手洗いでは優しい押し洗いで汚れを水に染み出していきます。揉み洗いをしてしまうとどうしてもどこかにシワができるので、あまり折りたたみすぎず、捻れが発生しないように注意しましょう。ゆすぎは一度にやろうとするとどうしても扱いが荒くなってしまうので、回数を重ねて水に洗剤と汚れを溶かし出すイメージで行いましょう。
脱水は軽めに
脱水は一番シワを発生させやすい工程なので、一般的な服よりもかなり軽めに行います。捻れに注意し、絞るというよりは水から出して押し洗いをするように水を切りましょう。水気が残っていても麻は乾燥が早いですし、ある程度の重さが残っていた方が干すときにシワが伸びます。
乾燥させる
洗濯が終わったら乾燥です。洗濯表示の通り乾燥機は使用せず、陰干しを行いましょう。多めに水気を残していると思うので、可能であればお風呂場に干すのがベターです。
ここでシワを伸ばすことで最後の仕上げが綺麗かつ楽になるので、可能であれば着物ハンガーを使用し、無ければ洗濯バサミを使ってできる限り広げた状態で干しましょう。このとき軽く叩いたり伸ばしたりして粗シワを取っておくと仕上がりがより綺麗になります。
麻は他の素材と比較して着物ハンガーのメリットが非常に大きいので、是非こちらの記事から着物ハンガーの購入を検討してみて下さい。保管で使用しなくとも、洗濯後の乾燥のために1,2本確保しておくだけでもかなり効果がありますよ。
アイロンをかける
乾燥が終わったらアイロンがけです。
部屋着等なら洗濯機の使用も一案
「人前で着る気が無い」、「夏涼しければ何でも良い」という割り切った扱いの部屋着等であれば洗濯機の使用も一応選択肢に入ります。ただ本当に凄いシワができるので、判断は慎重に、自己責任で実施してください。
麻製着物は頑張りすぎないお手入れを
麻はその涼しさから夏に着用することが多い反面、洗濯機の使用が難しく手入れに一手間かかるのでちょっと考えさせられる素材です。手洗いで完璧に洗おうとすると嫌になってしまうので、手洗いはシャワーを浴びるついでに汗を押し出す程度と割り切って、それ以上の本格洗いはプロに丸投げしてしまうのが良いと思います。面倒で着なくなってしまうよりは、お手入れで手を抜いて上手く着ていく方が楽しいですからね。
プロのクリーニングについてはこちらの記事で紹介しているので、是非併せてご覧ください。