自分で簡単に!綿(コットン)製着物のお手入れ
今回は浴衣や襦袢でよく使用される綿(コットン)製着物の自分でできるお手入れについて書いていきます。安価で吸水性があって肌触りが良い、使い勝手の良い生地なので、特徴とお手入れ方法を学んでより手軽に扱えるようにしましょう。
綿(コットン)の特徴
まずは綿(コットン)の特徴を知っておきましょう。
吸水性・通気性に優れている
綿の最大の特徴は吸水性です。洋服でも多くの下着に使用されているように、非常に吸水性があり、通気性にも優れていることから汗が乾きやすく肌着としてとても快適です。
肌触りが良い
生地が柔らかく肌触りが良いのも特徴です。前述の通り下着として、あるいは夏場に薄着をする際等には特に活躍します。
縮みやすく、シワになりやすい
柔らかさとのトレードオフで、どうしてもシワができやすい生地です。また乾燥の過程で縮みやすいので、サイズがシビアな場合は特に注意が必要です。ただサイズについては和服の場合、丈が短い場合等を除き、着方である程度カバーが利きます。
紫外線に弱い
天然素材故に、紫外線で強度が下がったり黄ばんだりすることがあります。シーズンで着潰すシャツ等は問題ありませんが、長く着る着物の場合は乾燥の際に陰干しか乾燥機を採用した方が良いでしょう。
洗濯の前に
以前ポリエステルのお手入れについて書いたときと重複しますが、大切なことなので何度でも書きます。洗濯をスタートする前に、必ず洗濯表示を確認しましょう。この後セルフクリーニングについて書いていきますが、対象の着物についている洗濯表示が最優先です。もし私が書く内容と洗濯表示が矛盾する場合は、必ず洗濯表示を優先して下さい。セルフクリーニングは自己責任になりますので、自信が無ければプロにお任せしてしまいましょう。
プロに任せるのであれば、こちらの記事をご覧ください。
簡単な汚れは普通に洗濯でOK
出先での対応
綿は吸水性が非常に高いことから、汚れもしっかり吸ってしまいその場で落とすのは困難です。夏場や野外であれば部分的に濡らして揉むことも可能ですが、基本的には帰宅後の洗濯で対応することになるでしょう。
自宅での対応
部分的には手洗いで、全体は洗濯機で洗うのが簡単です。扱いやすい素材なので洗濯表示さえきちんとチェックすればお手入れは比較的簡単ですね。
洗濯機で丸洗い
洗濯表示の確認
一例として私が所持する綿製浴衣の洗濯表示を見てみましょう。
私が所有する浴衣の表記がこちらです。
容器に波々は洗濯機
左上が洗濯機OKのマークですね。下に線が入っていないので、通常モードでの洗濯が可能です。数字は水温60℃以下で洗うこと、一般的な洗濯機で60℃を超える水温で洗うことは稀なので、あまり気にしなくて大丈夫です。ネット使用の表記はありませんが長い浴衣や着物は捻れて絡まってしまうことが多いので、着物は表記が無くとも洗濯ネットに入れて洗う方が無難です。
今回は問題ありませんが、綿100%でも洗濯機使用不可の着物は存在するので、確認を忘れないようにしましょう。
三角形は漂白剤
中上の三角形は漂白剤を意味します。三角形の中に斜線が入っているときは「酸素系漂白剤の使用はできるが塩素系漂白剤は使用禁止」の意味です。綿は吸水性がありますし、夏場や襦袢として着るときはどうしても汗が気になります。匂い対策として漂白剤を使用する場合は三角形の表記を見逃さないようにしましょう。
◯はドライクリーニングの情報
右上は石油系溶剤によるドライクリーニングのマークです。今回は✕なので負荷の表記ですが、自宅での手入れには関係ないので無視して大丈夫ですね。
□の中に◯はタンブル乾燥
左下にある四角の中に円が入った表示はタンブル乾燥の可否を示します。この場合は円の中に点が2つはいっているので、排気温度上限80 ℃でタンブル乾燥ができることを意味します。乾燥機は楽ですし短時間の乾燥になるので匂いがつきにくい等のメリットがある反面、生地が縮む可能性があります。それに対し自然乾燥は手間こそかかりますが、着物の重さでシワが伸びますし縮む心配はありません。どちらのメリットが上回るかは状況によるので、上手く使い分けましょう。
アイロンマークは中の点に注目
中右はアイロン使用可のマークです。中に点が2つはいっているのは中温(150℃)を限度としてアイロン仕上げができるという意味になります。
洗濯をスタート
ここまで準備ができたら洗濯をスタートしましょう。
気になるシミは下処理を
目立つシミについては洗濯機に入れる前に手で揉み洗いをしましょう。漂白剤が使用可能であれば、この段階でピンポイントに染み込ませておくと有効です。
洗濯機に入れる
準備ができたら洗濯機に入れましょう。今回の例では洗濯表示に記載されていませんが、前述の通り着物は表示が無くとも洗濯ネットを使用するのが無難です。綿の場合は通常の洗濯とほぼ変わらず洗濯機を使用できるので、色柄物に注意する以外は普通の洗濯と同じで大丈夫です。
洗濯機をセットする
洗濯表示に従ってセットしましょう。今回は弱洗いの表示も無いので、普段どおりの洗濯で大丈夫ですね。
乾燥させる
洗濯が終わったら乾燥です。乾燥機を使用する場合は洗濯表示に従いましょう。綿はあまり高い温度だと縮む可能性があるので、不安な場合は自然乾燥の方が安全です。
自然乾燥の場合は可能であれば着物ハンガーを使用し、無ければ洗濯バサミを使ってできる限り広げた状態で干しましょう。このとき軽く叩いたり伸ばしたりして粗シワを取っておくと仕上がりが綺麗になります。
着物ハンガーは洗濯時の乾燥だけでなく、保管にも非常に便利です。こちらの記事で紹介していますので、是非御覧ください。
アイロンをかける
乾燥が終わったらアイロンがけです。綿は多くの場合高温でのアイロン使用が可能ですが、今回のように洗濯表示があるばあいはそれに従って下さい。シワを取るにはスチームを使うより、霧吹きで水分を含ませてドライアイロンをかけるほうが効果的です。このとき水ではなく市販の仕上剤を使用しても大丈夫です。綿は化学繊維と比較して熱に強い材質ですが、あまり強くアイロンを当ててしまうとテカリが出ることもあるので、気になる場合はあて布を使用しましょう。
着物は平面で構成されているので洋服よりアイロンがけは簡単です。綿はシワがつきやすく消えやすい生地なので、広い面を繊維方向に沿って撫でていけばセルフクリーニングでもある程度綺麗に仕上げるのはそんなに難しくありません。
綿製着物は使用状況で洗濯の判断を
綿は多くの生地の中でも扱いが非常に簡単な材質であり、多くの場合自宅での洗濯が可能です。なのでプロに頼るかの判断は材質よりも状態に左右されるので、使用状況や生地の状態をよく観察して判断しましょう。普段着ている中での洗濯であれば基本的に自宅洗いで十分ですが、繰り返しの使用で襟元に汚れが染み付いてしまったり、タンスに放置して変色やカビ、匂いが気になる場合はプロに任せた方が本来のクオリティに戻る可能性が高くなるでしょう。
プロのクリーニングについてはこちらの記事で紹介しているので、是非併せてご覧ください。